『100日後に死ぬワニ』を見る目線 ~始まりから終わり、古典から炎上まで~

雑記
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 2020年3月20日、Twitter上で有名になった、1つの作品が終了しました。
タイトルは『100日後に死ぬワニ』。
漫画家であり、イラストレーターでもあるきくちゆうき氏がTwitter上で1話ずつ、毎日公開していた4コマ漫画です。
なんの脈絡もなく始まり、そして100日目、タイトルの通り、ワニくんが死んでお話は終わりました。
ただそれだけのお話なのに、どうしてこんなに話題になったのでしょうか?
今回はその手法や内容について少し触れてみます。

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1)『100日後に死ぬ』という予告

 実はこのタイトルの付け方が最初のキャッチーなポイントです。
例えば、あなたが映画を見ているとします。
映画では2人の男性がテーブルで向かい合って座り、何やら話をしているシーンだとしましょう。
15分後、この2人が座っているテーブルが突然爆発します。
突然テーブルが爆発したことにより、観客であるあなたには、15分間の会話という冗長な印象と、ほんの十数秒の大きな驚きがもたらされることになります。
また同じ場面に戻りますが、男性がテーブルに座る前に、例えばテロリストが机の下に時限爆弾を設置するシーンを追加しましょう。
爆弾の制限時間は15分とします。
2人の男性は、また同じようにテーブルに向き合い、何か話を始めます。
この時、観客であるあなたには、15分間のサスペンス…男性たちはどうなってしまうのか?誰かが爆弾を発見するのか?という、心の動きがもたらされます。
同じシーンを見たのに、ただテーブルが爆発した時より何十倍もの時間、心を動かされ続けるということですね。
この手法の出展は古く、なんと、サスペンス映画の巨匠であるアルフレッド・ヒッチコックの映画のバイブル『映画術』に見られる手法です。
より正確な書名は『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』となり、ヒッチコックの映画テクニックや映画理論、ヒッチコックへのインタビューが収録されている本となっています。
これが出版されたのは、なんと1966年。
いまから50年以上も前の書籍です。
この手法が用いられ、私たち読者は、100日後に死ぬワニくんを見守る間、ずっとハラハラさせられることになった、ということですね。

2)作者の立場…残されたネズミくん

 お話が完結した後、作者であるきくちゆうき氏から、『自分はワニくん、つまり友人を見送ってしまったネズミくんの立場だった』という旨が伝えられました。
3日目に道路を歩いていたヒヨコを助けていたワニくんですが、100日目でも同じようにヒヨコを助けようとして、恐らく、運悪く車に轢かれてしまったのでしょう。
その死は、読者である私たちにとっては必然でしたが、タイトルを知らないワニくんの友人たちにとってはあまりに突然で、あっけないものだったでしょう。
ですが、元々「死」は誰にとっても等しくやってくるものであり、それがいつかは判らないからこそ、日々を精一杯生きていこうとしていくものです。
100日目を迎えたTwitterのリプライ欄にも、ワニくんに勇気をもらった、毎日を大切に生きていこうと思う、といった前向きなリプライが散見されました。
誰にとっても当然と思われている「生きている」という状態は、決して当たり前の状態ではありません。

3)書籍化、グッズ化、映像化…完結後の炎上

 さて、大評判になり、ワニくんが無事(?)死んでしまい、『100日後に死ぬワニ』という漫画は完結しました。
実は完結する数日前には、漫画が書籍化する予定であり、書籍には前日譚や後日談が掲載される予定があるとTwitterでも知らされていました。
そこまでは何の批判もありませんでした。
しかし、ワニくんの死から数時間後、至極明るい調子でグッズ化や映像化を伝えるツイートが流れました。
しかも、『100日後に死ぬワニ 公式』としてのツイートで、作者本人のアカウントからツイートされたものではありませんでした。
それ自体に問題はなかったと思います。
グッズ化に関しては『100ワニ追悼 POPUP SHOP』とかなりポップな書体で書かれており、白い羽を付けたワニくんが明るい様子で手を振っているイラスト付きです。
おそらく、これが炎上の原因でしょう。
誰もがワニくんの死を受け止め、しめやかな気分を持っている時に、商業、お金、といった要素を押し出したことに対しての反発が大きかったのだと思います。
ただ、少しだけ考えて頂きたいのは、『100日後に死ぬワニ』というコンテンツがとても魅力的であったからこそ、Twitter上で拡散され、多くの人がワニくんという素敵な人物を知り、好意的に受け止めました。
そのコンテンツが企業にも認められたからこそ、グッズや書籍として商品化されるのだと考えて下さい。
Twitterに掲載されている段階では作者には恐らく収益はありません。
難しい問題のように思えますが、こんな些末な問題で作者であるきくちゆうき氏の心を痛めようとする反応をするのは良くありませんよね。

いかがでしたか?
ワニくんという単語がTwitterのトレンドにもなっていたので、知っている方も多かったと思います。
『100日後に死ぬワニ』は今もTwitterで無料で公開されいます。
知らなかった方も、ぜひワニくんのお話を読んでみてくださいね。