昔話に見る定型文的ジャンルと現代ストーリーのつながり

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みなさんは、日本古来のいわゆる「昔話」をいくつくらいご存知ですか?
「桃太郎」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」…題名はたくさんあがると思います。
これらにはいくつかの定型文のようなジャンルがあることはご存知でしょうか。
今回は、いくつかのジャンルを、現代で見られるストーリーも併せて紹介しながら解説していきます。

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1)黄泉戸喫(よもつへぐい)のルール

これは大きな概念として「黄泉」という死者が住むと言われている世界へ渡った際、黄泉の世界で「煮炊き」…調理したものを食べてしまうと生者の暮らす現世に戻れなくなる、というお話です。
ここでは幽世(かくりよ)と現世(うつしよ)という概念で説明しましょう。
根本的なお話ですが、生きた人間が幽世へと迷い込んでしまうという概念が生まれる前段階として、『古事記』のイザナギ・イザナミ神のやりとりがあります。
イザナギが幽世に降りたイザナミを迎えに行った際、
「迎えに来るのが遅い、もう黄泉戸喫してしまった」と伝えます。
つまり、イザナミは幽世で煮炊きされたものを食べてしまった為に、もう現世に戻れなくなってしまったよ、と伝えていることになります。
このルールは、現在では少し形を変えて、『同じ釜の飯を食う』ということわざに繋がっています。
食事を共にすることで、仲間意識、同郷意識を持つということわざですね。
これが現代において表現されていることで有名なのがジブリ作品の『千と千尋の神隠し』です。
橋を渡った先、幽世で調理された料理を食べてしまった千尋の両親が豚になってしまうのは、現世の姿を失ってしまったことの現れです。
また、同様に幽世で姿が消えそうになっている千が幽世のおにぎりを食べることで、幽世での存在を確立するシーンが該当します。
この他にも『崖の上のポニョ』において、ポニョが宗介の家で食べるハム入りのラーメンも該当します。
ポニョの場合は幽世から現世への世渡りをしたことになりますね。
ジブリ作品では食事をするシーンがよく描かれていますので、どういう意図の食事なのかを考えながら見るのも面白いですよ。

2)報恩譚・報復譚(善行・悪行に報いる話)

昔話の中でこのルールが分かりやすいのは『花咲かじいさん』のお話でしょう。
『動物報恩』としても有名なお話です。
基本的に昔話に限らず、過去より伝えられているお話は中国から伝来したものが多く、伝来したものは特に仏教や儒教の影響を強く受けています。
宗教を広く流布する為に、宗教の教えに従うとこんなに良いことがありますよ、と宣伝する為のものでもあったからです。
良いことをすれば良いことが自分に返ってきますよ、逆に悪いことをすれば、自分が不幸になりますよ、という宣伝ですね。
元のお話が仏教など宗教に関わっていると、このお話の形が多いようです。
特定のお話は例示しませんが、現世においてはとても普遍的な概念ですよね。
普遍的に感じられるほど周知されたからなのか、ただ人が善性に生きているだけなのか…そこはわかりません。

3)「見るな」のタブー

『鶴の恩返し』が最たる例のルールです。
これも『動物報恩』のルールがあり、それに追加されているルールとして考えればわかりやすいでしょう。
助けた鶴が恩返しに来た際、「決して覗かないで下さい」と伝える、この部分です。
「見る」という行動によって「神秘性」や「神性」が暴かれてしまい、その力が失われてしまう…という概念ですね。
現代においてはウェブ上で知り合った異性と、実際に会ってみたら外見がちょっと…となったりすることと少し似ているかもしれません。
人は何故、見えないものに対して幻想を抱いてしまうのでしょうね。
ジブリ作品では、ちょっと違うかもしれませんが『天空の城ラピュタ』のムスカが該当すると思います。
有名なセリフである「目が、目が!」というのは、ラピュタの神性を侵し過ぎた為に目を焼かれたと見ることが出来ます。
極端な話、断罪されるだけなら目でなくても、足や手が切断されたり、直接死に至らしめられてもよかったはずです。
それをわざわざ「目」という部分の欠損をあてたのは、このルールが念頭にあったからではないかと考えています。

4)異種流離譚

『浦島太郎』や『舌切りすずめ』が該当します。
どちらも『動物報恩』の結果、浦島太郎は竜宮城へ、舌切りすずめを助けたお爺さんは雀のお宿へと誘われ、豪華なもてなしを受けるというお話です。
この「異種」というのは、例えば人間が、人間以外(異種)の世界へ入り込んでしまうということを指しています。
少し極端な例ですが、生死をさまよっている人間が三途の川を見た、なんて言い方をしますよね。
この時、生死をさまよっている人が三途の川を超えた時、人間の世界から足を踏み外してしまうことも流離譚と言えるでしょう。
ただ、地獄はある意味人間の為の世界でもありますから、異種の流離譚ではないかもしれませんが。

いかがでしたか?
現代に残されている「昔話」はこのような定型文のようなジャンルをいくつか組み合わせて作られていることが多いです。
気に入ったストーリーがあれば、どんな定型ルールがあるかを考え、そこから新たに好きなストーリーを探すことも出来ます。
ぜひ、自分の好みのジャンルを見つけて下さいね。
私は黄泉戸喫が大好きなので、説明文も力が入ってしまいました。