コロナ過で色々な業界で廃業・閉店が増える中、ゴルフ場では例年以上にお客さんが増えている事をご存知ですか?
今回はそんなゴルフ業界の今後について、関係者との話から私の考えを書きます。
ゴルフ場の現状
大手グループコースではプレー代の値下げによる売り上げ減少を、人件費の削減・基本オペレーションの単純化(セルフ化)によって対応している。
大手グループコースと違い単独・もしくは小規模グループゴルフ場は新しいサービスを行うことをしないコースが大半です。
予算的なこともあるのでしょうが、コロナ過に於ける安全地帯とされるゴルフ場で、人件費や接触が減る自動精算や自動チェックインなどの無人オペレーションがあまり進んでいないのも問題です。
ゴルフ場関係者に話を聞いたところ、会員(メンバー)さんがフロントで次回の予約を取るついでに精算をしていくので、無人化が難しいとのことでした。
それに高齢の方が多いので、使い方を説明するために結局スタッフが必要だと言っていました。
プレー代も一昔前に比べ、かなり下がっており生き残れるかが心配だと言うことでした。
ここから私の考えです。
まず人件費についてですが、自動精算機を導入することでオペレーション業務が減ることによりスタッフの削減が可能となります。
自動精算機が2台で約1000万だと仮定して、社員1名の削減を行うと約3年で元を取れる計算になります。
削減できるスタッフが2名ならば2年程度で終わります。
必要な時のみフロントへ出ることで1日2名のスタッフがいれば十分です。
削減しないのであれば、特にレストラン部門などでは慢性的な人材不足になっているので、そちらの部署へ手伝いに行くことで人材不足が解消され、スタッフのスキルアップ・顧客満足度も上がるでしょう。
次に自動精算機の使い方ですが、こちらは全然問題ありません。
今や大手グループコースの大半で自動精算機が導入されているので、通常使用するだけならばスタッフの説明など全く不要です。
むしろお客さんの方が色々な自動精算機を使っているので、ほとんど使うことのない従業員より使い方は詳しいかと思います。
自動精算にすることによって、金銭授受の人的ミスが減り終業時間も早くなるでしょう。
フロントにベルを置くなどして、予約対応をすることで会員の不満もほとんど出ないのではないかと考えられます。
次に売上面に関してですが、資金力のあるグループコースや大きな親会社を持つゴルフ場は現状維持でいいのでしょうが、小規模になってくると業界全体のプレー代減少は大打撃だと言えるでしょう。
最大の問題点は会員の存在です。
会員の数は多ければ多いほどいいと思いますが、実際にはそんなことはないでしょう。
会員が1000名いたとして年会費30000円で年会費収入だけで3000万円、数字にすればとても大きい数字ですが、プレー代は土日通常で12000円だと仮定してメンバーは調査の結果6000円程度とします。
土日の予約がほぼ会員で埋まるのは必然かと考えられます。そうすると通常埋まるはずの50組中25組が会員なら土日の2日間で90万円の売上減少です。ちなみにそれを1年間で当てはめると4860万円です。さらに長期連休や祝日なども含めると被害は甚大なことになること間違いなしです。
会員がいなければ年会費収入はなくなりますが、年間トータルで6000万円程度のプラス収益が見込まれると思います。
私が考える1番いいのは土日をコンペだらけにして、会員の入る隙間を極端に減らしてしまう。プレー代が一般客とほとんど変わらない平日会員を作るということです。
多少会員からの不満は出るでしょうが最近の会員は調査の結果、預託金が10万円程度の小口ばっかりなので退会してもダメージはほとんどないでしょう。
というよりプラスでしかないです。
それに入会金や名義変更料等々よくわからない費用がかかり、入会時に4.50万円払っているので簡単には退会しないと予想されます。
またメンバータイムという謎なシステムを設けているゴルフ場も多数あり、9時前後の何もしなくても一般客が入るであろう時間帯を、入るかわからないメンバーの為に押さえていることもあります。
ここまでくるとゴルフ場が自ら売上を減少して、潰そうとしているのではないかと錯覚してしまう程でもあります。
さらに会員の中には預託金(会員からお金を預かり、それをゴルフ場開発に使う)がとても高額で1000万円を超える人もいます。
大体のゴルフ場では会員を退会する際に預託金を返還するという契約になっていると思います。
昔であれば売上もかなりあり、少しぐらいの返還であれば何も問題なかったのでしょうが、現在の売上が下がった時期の高額の返還請求は大ダメージでしかありません。
完全に負の遺産です。
バブル時に会員権を購入し預託金を預けた団塊の世代の方も70代になり、体力的にもゴルフができないので退会・預託金の返還請求の流れとなり、ゴルフ場にはお金がないので民事再生による預託金の減額・もしくは預託金の存在を軽く見ている外資系の企業にゴルフ場を売却が現在の主流ではないでしょうか。
次の問題点は近隣競合コースとの値下げ合戦です。
ゴルフ業界の業績悪化に拍車をかけている要因で、顕著に表れているのがプレー代の値下げでしょう。
一度下がってしまったものは中々上げることが難しいのが現状です。
最高値のプレー代に比べると、現在では半値以下でのプレー代が当たり前となっているので、その中で生き残ろうとするのはとても大変です。
その中でも上手に立ち回っていると感じるのは、料金を下げてオートメーション(セルフ化)を行っているコースでしょう。
朝の車からバックの積み下ろし、カートへの積み下ろし、クラブ清掃等々のセルフ化をしっかりと行っているコースは、長続きしそうな印象です。
さらに徹底するのであればスループレーのみにし、レストランの営業も無くして外部から飲食店を呼んでくるなどといった工夫も有りかと思います。
ただそこまでセルフ化していても人件費を削減していないコースもあるので、そういうコースは要注意です。
カートに積むのを従業員がボーっと見ているだけだと、ネット社会の現代だと口コミなどに書かれて評価がどんどん下がっていきます。
そうなると集客にも支障が出るので、人件費がかかる・客が来ないの最悪なループに陥ります。
ここからは私が考える今後のゴルフ場で行ってみると面白いかもしれない案です。
みなさんは最近増加してきたサブスクリプションサービスという言葉をご存知ですか?
サブスクリプションサービスとは「定額料金を支払うことで一定のサービスを受けられるサービス」のことです。
英語では「予約購読」や「定期購読」という意味の言葉です
少し前はそこまで馴染み深い言葉ではなかったのですが、近年では動画配信サービスや音楽配信サービスなどで一気に周知が進みました。
動画では「Netflix」や「Amazonプライム」、音楽では「Apple Music」や「Spotify」などが有名です。
最近では飲食業でのサブスクリプションサービスも増えてきました。
ゴルフ場では基本的にポイントカードやダイレクトメールなどを使って、リピーターを獲得するという営業方法が一般的です。
現在のゴルフ場のお客さんの大半を占めるであろう高齢者の集客にはまだまだ使えるとは思いますが、今後の将来的なことを考える上で一番重要なことは「若年層・中年層」の取り込みが一番の課題かと思われます。
しかし先に挙げたものは管理の手間や費用がかかるし、ネット社会の現代においては若者の集客には不向きな印象を受けます。
そこで私の考える今後のリピーター集客方法の一つがサブスクリプションサービスです。
現在のゴルフ場でサブスクリプションサービスを行っているコースはとても少ないので、先行者利益ではないですが真っ先に始めてみる案も面白いとは思います。
ゴルファー人口の減少に伴い、今のゴルフ場に必要なのは人口ではなく回数だということが素人の私でもわかります。
その一人当たりのラウンド回数を増やすのに、一役買ってくれそうなのがサブスクリプションだと思います。
ちなみに私が簡単に調べて出てきたのは3コースでした。
内容は以下の通りです。
フォレストカントリークラブ 三井の森(長野県)
39才以下 午後ハーフ定額
9ホール月額20,000円
冬期クローズ中の為、通常料金不明
鷲ヶ岳高原ゴルフクラブ(岐阜県)
20~30代限定 ゴルフ回り放題
9ホール月額9,800円 18ホール月額18,800円
通常9ホール4,400円 18ホール10,140円
雲雀ゴルフ倶楽部(兵庫県)
年齢制限なし ショートコース
月額22,500円
通常約4,000円
上記の3コースのように数回ラウンドすればお得になるのがサブスクリプションの一般的な形態です。
回数をこなすエンジョイゴルファーや、アスリートゴルファーを自分のコースに引き込み、尚且つその人達の同伴来場も狙えるのではないかと思います。
サービスを購入していれば、知り合いをゴルフに誘う際に必然的にそのコースが選ばれるのは容易に想像できます。
購入した人が何回も利用したら売上が下がると思うでしょうが、そこは購入者の数を制限するなどすれば何も問題はないでしょう。
それにサービス購入者は当日の支払いが少ないのがわかっているので、レストラン売上やショップ売上のような、プレー代以外のその他売上を上げやすい状況にあるので、そこからはゴルフ場の努力次第です。
次の面白そうな案は、ゴルフ場の枠を外れたビジネスです。
ゴルフ場には決まった予約数があり、来場する人数に限りがあるのでプレー代の収益に関しては、現状より大幅な増加を見込むのは難しいです。
そうすると次に考えるのは、プラスアルファであるその他売上になってきます。
ゴルフ場のプラスアルファで有名なのは「ワンオンチャレンジ」かと思います。しかしそういったイベントはもう飽和状態になっているので、そこまでのプラスは見込めないです。
飲酒運転が厳しくなりレストランでのアルコール提供量が減っているのは間違いないので、テコ入れするとすれば「お土産」「ショップ」「プレー外の飲食」になるでしょう。
まずお土産ですが、既存の業者頼りのありふれたお土産ではなく、地元の農家さんと販売委託契約のような形で季節の野菜を販売する、地域の特産品を大々的にPR販売する、ゴルフ場自家製のスイーツなどが考えられます。
季節の野菜であればゴルフ客でも買いやすく、売れ残れば従業員が買えるなどといった特典もありますし、最悪農家が見つかなければ従業員の家庭菜園から始め、収益性が見込めるのであれば大きく広げていっても大丈夫でしょう。
特にここ近年、農協に出荷する際のお米の買取金額が下がっているという話を聞きます。
(30kgで1~2,000円下がっているそうです)
そういったお米をゴルフ場で販売することにより、農家とゴルフ場お互いがWinWinの関係を築けるのではないでしょうか。
ゴルフ場としては買取してもお米であれば、オープンコンペやお客さんのコンペ賞品依頼などで使えるのでロスはないと思われます。
次に考えるのはショップですが、色々なゴルフ場に行ってみて思ったのですが、まず何よりもどこのゴルフ場も置いているものが大体同じです。
どこに行っても同じようなゴルフウェア・バッグ・ゴルフ用品ばかりで、酷いところだとミズノの商品しか置いていないようなゴルフ場もありました。
不良在庫を抱えることによるリスクを恐れ、ミスのない無難なゴルフメーカーのみの取り扱いしかしていないような印象です。
不良在庫を恐れるぐらいであれば、収益が減るかもしれないが委託契約をしてくれる業者を探したり、季節に応じて返品交換してくれる業者を探すなりと、対応策はいくらでもあるので、その点はただ単純にゴルフ場の怠慢であると思います。
ちなみに今年の夏ぐらいに兵庫県にある某ゴルフ場にお邪魔した際は、一般アパレルやブランド品、目玉商品に700万円のクラブセットなどの他のゴルフ場にはない対応をしていました。
普段ゴルフ場で見ることのない「DIESEL」「CALVIN KLEIN」「THE NORTH FACE」などなど他にも多数のブランドを販売していました。
Tシャツやパーカーなどを販売しているスタッフと話をしていると、ショップはおまけで本来は買取を行う仕事をしているとのことでした。
ようはリサイクル業の延長でゴルフ場内にショップを広げさせてもらっているということです。
これに関してはとても賢い考えだと思いました。
ゴルフに来るお客さんは極端にお金に困っている人はおらず、むしろお金持ちの人も多いので、販売のついでに営業をかけることもできる。さらにブランド品を買うような人は家に使わなくなったそういった物を持っている可能性が高い。
現在主流であるアポ電からの出張買取よりも、よほど信頼できそうな印象でした。
ゴルフ場側としてもショップの商品を売ってもらえるし、ブランド品を販売した際の手数料をもらっているはずなので、手間なく利益が得られる仕組みでした。
古い考えを持った会員や、ゴルフ場上層部の人間たちでは絶対に採用しない案でしょうが、ゴルフ場の多角化としてとても面白い試みといえるでしょう。
今後こういう柔軟な考えができるゴルフ場が増えるといいですね。
最後にプレー外の飲食ですが、現在のゴルフ場の体制からこれが恐らく一番難しいと思います。
ゴルフをされる方ならご存知かと思いますが、正直言ってゴルフ場の飲食代はとてつもなく高額です。自動販売機の飲み物ですら通常の自動販売機の倍額近く高いです。
基本のプレー代に昼食代が付いていて、ステーキやとんかつなどを食べる際に差額でプラス料金が発生するというのが一般的です。
では差額の無い普通の昼食代がいくらなのかというと、ゴルフ場にもよりますが調査の結果1,200~1,500円程度が相場でしょう。
その差額の無いメニューが何かというと「うどん」「カレー」などです。
普通にその半値で食べられそうな印象しかないですし、金額に見合った感動が得られるかといえば全然そんなことはありません。むしろマイナスなゴルフ場もあります。
こうした謎の高額設定にもかかわらず、食べても食べなくても料金に含まれているのでという事実上の強制。
全プラン昼食別にしてしっかりと課金制にすればいいのではと思います。
しかし関係者の話を聞くと、ゴルフ場は基本山の中だから近くに飲食できる所がない、食べても食べなくてもどっちでもいいにすると食材のロスが増えるとのことでした。
はっきりとした数字はわからないのですが、ゴルフ場のレストラン売上の割合は人件費などを加味すると、ほとんどがプラスマイナスゼロという話を聞いたことがあります。
そうするとゴルフ場としては何のためにレストラン営業をしているのかが甚だ疑問です。
別会社に既存のレストラン施設ごと貸し出して、テナント化してしまうのが一番得策ではないかと思います。
テナント化してしまえば人の手配もいらないですし、廃棄やそういったことまで考えなくていいのでゴルフ場的にかなり助かりますし、その浮いた分でお客さんには価格に反映させることもできるので、とてもいい案だと思います。
ただゴルフ場の来場者には上限があるので、飲食店がテナントに入るかは疑問ですが、家賃をなしにして光熱費と売上の数%にすれば手を挙げるところも出てくるでしょう。
是非一度検討していただきたいものです。
話を戻しますが、プレー外の飲食となると問題となってくるのが「アクセス」と「ドレスコード」です。
まずアクセスですが、ゴルフ場は広大な土地が必要なので、どうしても山の中などに作ります。ですのでそういった所までご飯を食べに来させるという画期的な案が必要です。
例えばそこでしか食べられない特別なメニューであるとか、SNS映えを狙ったメニューであるとか、少し考えればいくらでも思いつきそうな気がします。
またそういったメニューを作ることで若い来場者を呼ぶといった相乗効果が生まれるかもしれません。さらにSNSで拡散されれば一般のお客さんが来る可能性も増えると思います。
次にドレスコードですが、最近ではドレスコードの撤廃が徐々に進んできておりますが、まだまだ古い習慣から抜け出せないコースが多いのが現状です。
一般的にご飯を食べるだけで襟付きシャツを着たり、ジャケットを羽織るなど中々しないですよね。まずはそういった所のルールを緩くする部分から始めてほしいものです。
そうすることで今までゴルフ場とは縁がなかった人たちを呼べる可能性が生まれます。
長々と書きましたが最後に少しだけ。
現在のゴルフ場の経営方法ではプレーヤー減少・施設の老朽化による修繕などもあり、あと10年後には大半が事業撤退を強いられるでしょう。
経営者の方には自分のコースは大丈夫などという慢心を捨て、様々な取り組みを実施してほしいですね。